製作した経緯

このシールを製作するきっかけは二つの出来事にあります。

一つは、当時70代にさしかかった母が自ら運転する車で、母の命のみならず、もしかしたら世間を騒がす大惨事の交通事故を招いていたかもしれない怖い体験をしたことにあります。

母は出掛け先から帰宅するため車を発進させました。その時右足でアクセル、左足でブレーキと両方を踏んでしまいました。

家まで2㎞の道を車はごう音と共に、途中4つの信号と、運よく遮断機が上がったままの踏切を超えて、ガッタガッタと進んでは止まるを繰り返して家までたどり着き、最後は椿の木にぶつかってようやく停止しました。

異常を察して母の車の後をついて来てくれたゴミ収集車の方に母は助けられました。

幸い母に怪我はありませんでしたが、九死に一生を得る体験をしました。

後になって、何で右足のアクセルを離さなかったの?の問いに、母は「何がどうなっているのか、何をどうしたらいいのか分からなかった。とにかく体がこわばって、恐ろしくて、より力が入り、結果強く両足を踏み込んでいたのだと思う」と回想しました。

母がパニック発作にあったのは明らかです。

もう一つは、当時、高齢者運転によるアクセルとブレーキの踏み間違い事故が多発を極め、テレビの情報番組でも取り上げられていました。

たまたま観合わせた番組の中で、運転アドバイザーなる方が複数のパネラーに、ゆるい入りで出題をする場面がありました。『アクセルとブレーキ、左にあるのは何?右にあるのは?即答でお願いします。』と…。

観ていて、これは演出?パネラーの一瞬考え込む、頭をひねる反応に私はとても驚きました。何故なら、すぐさま、アクセルが右にブレーキが左と答えられた方がいなかったからです。

確かに、自分も一瞬考えてしまう…何故だろうととても不思議に思いました。 調べていくと、習熟した運転とは、体が勝手に動く・覚えているの感覚が運転時の足にもあって、無意識に日頃の運転をしているようです。

答えを導き出すまでの数秒の時間は、感覚で覚えていることを、あえて形にしなさいとなった時、覚える時に活躍した大脳からの記憶を引っ張り出すのに掛かる時間なのかもしれません。

そこで、私は母の体験を重ねながら考えました。日頃無意識で運転している、その無意識が有意識に戻される何かが運転中に起こった時、自分はブレーキをすぐさま踏み込むことが出来るだろうか?ブレーキが左に位置する方だと分かる?その前に先に踏んでいるアクセルを離すことをしないと、いやその前に、母が出来なかったこわばる右足を持ち上げなければ… 

密室に近い走行中の狭い車内で、話しかけられる同乗者がいたら助けを求めることが出来るかもしれないけど、一人だったらきっとパニック状態になるだろう。

そこで、その一連の動作の手引きが運転中の目の前にいつもあったなら安心できるのでは。

運転中有意識に戻される何か怖いものに万が一遭遇したとしても、その手引きに背中を押され、なんとか行動に移せるのではないだろうか。

そして何より、手引きに具体的な足下のアクセルとブレーキの位置・動かす右足を図に表したら、アクセルとブレーキの踏み間違い事故は少しでも減らせるのではと考えました。

母の怖い体験時にも、もしも…足下のアクセルとブレーキの位置・動かす右足の確認図が運転席から見える場所にあって、もしも…パニックの中の母であったとしても、その図を見て、アクセルからこわばる右足を動かして離すことができていたら、この怖い体験は半減できたのではないかと思いました。

この場合、左足はブレーキにあったので、右足のアクセルを離しさえすれば、車はそれだけで止まることができたはずだからです。

このようなきっかけで『右足アップダウンシール』は生まれました。

この『右足アップダウンシール』は、車の運転の安全を保障するものでも、適切に対処するためのアイテムに代わるものでもありません。

このシールがハンドル面にあったら、という価値に思いを巡らせていただければ幸いです。